給料未払いの対処法|証拠の集め方・労働基準監督署への申告・時効と遅延利息を解説
給料未払いは労働基準法24条の全額払いの原則に反する法律違反です。令和7年の監督指導は22,605件・128億円。証拠の集め方、労働基準監督署への「相談」と「申告」の違い、3年の時効、退職後の年14.6%の遅延利息、生活支援制度までを目安として整理します。
給料未払いは「全額払いの原則」に反する法律違反
給料が支払期日に支払われない状態は、単なる会社の都合ではなく、労働基準法第24条が定める「賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」というルール(全額払いの原則)に反する法律違反です。給料日の翌日には、すでに違法な状態が始まっていると考えてよいでしょう。
国税庁の令和7年分 民間給与実態統計調査によると、民間給与所得者の平均給与は487万円(男性597万円、女性342万円、正社員559万円、正社員以外210万円)でした。1か月分の給料が入らないだけで、その年の年収487万円から税金・社会保険料を引いた手取りの目安を解説">手取りは大きく目減りします。まずは自分の手取りがいくら減っているのかを手取り早見で確認し、年収ベースの影響は年収指数も参考にしながら把握しておきましょう。
令和7年の賃金不払事案は22,605件・128億円
厚生労働省が公表した令和7年(2025年)の賃金不払事案の監督指導結果は、次のとおりです。
| 項目 | 令和6年 | 令和7年 |
|---|---|---|
| 監督指導した件数 | 22,354件 | 22,605件(+251件) |
| 対象になった労働者 | 185,197人 | 173,016人 |
| 不払いの金額 | 172億1,113万円 | 128億5,782万円 |
件数は微増した一方で、対象労働者数と金額はいずれも減少しています。ここでいう「賃金不払」には、給料そのものの未払いだけでなく、時間外労働の割増賃金の不足や、始業前の準備・終業後の片付けを労働時間に数えていないケースも含まれます。
見逃せないのは解決状況です。22,605件のうち21,731件(96.1%)は、指導を受けた会社が支払いを行って解決しています。労働者ベースでは97.0%、金額ベースでも85.5%にあたる109億9,703万円が支払われました。ただし、これは申告・指導があった事案の集計であり、泣き寝入りした分は含まれていません。放置せず動くことの重要性を示す数字といえます。
給料未払いへの基本手順|記録を残して請求する
手順は大きく3段階です。
- 未払いの金額と期間を特定する:給与明細と通帳・入出金明細を並べ、本来の支払額と実際の入金額の差を計算します。
- 記録が残る形で会社に請求する:口頭だけでなく、メールやチャットなど「いつ・誰に・いくら請求したか」が残る方法で催促します。
- 応じなければ申告・法的手続きへ進む:「本人が請求したが支払われなかった」という事実が、次の段階で効いてきます。
そろえておきたい証拠は「働いた事実」と「支払われていない事実」の2系統です。雇用契約書や労働条件通知書、タイムカードの写真、勤怠アプリの画面、シフト表、業務メールの送信時刻、給与明細、銀行の入出金明細などが基本になります。契約書やタイムカードが手元になくても、通勤の交通系IC乗車履歴、社内システムのログイン記録、同僚とのメッセージ、家族に送った連絡、手書きの作業メモなどが、働いていた時間帯を推認させる材料になり得ます。証拠資料は複製して保管し、原本は手元に残しておくのが安全です。
なお、賃金請求権の時効は、労働基準法第115条・附則第143条により当分の間3年とされています。古い分から順に請求できなくなるため、記録の確保は早いほど有利です。
労働基準監督署への「相談」と「申告」は別物
労働基準監督署は、労働基準法違反の申告を受け付け、会社に対して調査や指導を行う行政機関です。ただし、窓口で話を聞いてもらう「相談」と、違法の事実を正式に伝えて調査を求める「申告」は別物で、相談だけでは原則として動きません。「労働基準法違反の事実を申告します」と明確に伝え、申告として受理してもらうことが第一の分かれ目です。申告者の情報には労働基準法第104条による守秘義務があり、会社に知られることはないとされています。匿名での申告も可能ですが、詳細な調査のためには実名での申告が望ましいと一般的にいわれます。
一方で、労働基準監督署は未払い賃金そのものを直接取り立てる機関ではありません。是正勧告を受けた会社の多くは支払いに応じますが、それでも支払われない場合の回収は、内容証明郵便による請求や労働審判・少額訴訟などの法的手続きになります。この構造は理解しておく必要があります。手続きの判断に迷う場合は、労働問題に詳しい弁護士や法テラス(日本司法支援センター)への相談が選択肢になります。
退職後の未払い賃金には遅延利息がつく
退職した後の未払い賃金には、退職日の翌日から年14.6%の遅延利息を上乗せして請求できるとされています(賃金の支払の確保等に関する法律第6条・施行令)。在職中の分には民法の法定利率(現在は年3%・変動制)が適用されるとされ、退職後のほうが利率は高くなります。放置するほど会社側の負担が増える設計で、これ自体が交渉材料になり得ます。
内容証明郵便は、いつ・誰が・誰に・どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明してくれるサービスです。未払いの期間・金額・計算根拠を示し、支払期限を設定して送付します。3通作成し、1通を会社へ、1通を郵便局の保管用、1通を自分の控えとして保管し、配達証明を付けると確実に届いたことを証明できます。時効が近い場合、内容証明による請求は完成猶予の効果が期待できるとされています。
生活が苦しいときの公的支援と倒産時の制度
給料が入らず生活が立ち行かない場合は、公的な支援制度も検討してください。生活福祉資金貸付制度の「緊急小口資金」は、急な出費や収入減少に対応するための小額の貸付制度で、低利または無利子で利用できる場合があります。申請先や要件は自治体によって異なるため、お住まいの社会福祉協議会や自治体の窓口で確認しましょう。
会社が倒産して賃金が支払われないまま退職した場合は、「未払賃金立替払制度」により、国が未払い賃金の一部を立て替えて支払う仕組みがあります。対象や上限、手続きの期限には条件があるため、該当しそうな場合は早めに労働局などへ問い合わせることをおすすめします。
労働基準監督署のほかにも、都道府県の労働局や総合労働相談コーナー、自治体の労働相談窓口など、無料の相談先が設けられています。状況を整理したうえで、適切な窓口につながることが解決への近道です。関連する基礎知識は記事一覧からも確認できます。
よくある質問
給料未払いを労働基準監督署に申告すれば、未払い分を会社から取り立ててもらえますか?
労働基準監督署は、法令違反の是正を求める行政機関であり、未払い賃金そのものを直接取り立てる機関ではありません。是正勧告を受けた会社の多くは支払いに応じますが、応じない場合の回収は、内容証明郵便による請求や労働審判・少額訴訟などの法的手続きが必要になるとされています。
タイムカードや雇用契約書が手元にないのですが、申告できますか?
手元にない場合でも、諦める必要はないとされています。通勤の交通系IC乗車履歴、社内システムのログイン記録、業務メールやチャットの送信時刻、同僚や家族への連絡、手書きの勤務メモなど、働いていた時間帯を推認させる材料が証拠になり得ます。今日から記録を残し始めることにも意味があります。
未払い賃金は何年分までさかのぼって請求できますか?
賃金請求権の時効は、労働基準法第115条・附則第143条により当分の間3年とされています。古い分から順に時効が完成していくため、気づいた時点で早めに対応することが大切です。なお、2020年3月31日以前に発生した分など、経過措置により扱いが異なる場合があります。
退職後に未払い給料を請求すると、利息はつきますか?
退職した労働者の未払い賃金には、退職日の翌日から年14.6%の遅延利息を上乗せして請求できるとされています(賃金の支払の確保等に関する法律第6条・施行令)。在職中の分については民法の法定利率(現在は年3%・変動制)が適用されるとされ、退職後のほうが利率は高くなる仕組みです。
会社が倒産して給料がもらえない場合はどうすればよいですか?
会社が倒産したために賃金が支払われないまま退職した場合、「未払賃金立替払制度」により国が未払い賃金の一部を立て替えて支払う仕組みがあります。対象や上限、手続きの期限には条件があるため、該当しそうな場合は早めに労働局などの窓口へ問い合わせることをおすすめします。
参考情報
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